2012年9月16日日曜日

アジスロマイシンが気管支拡張症の増悪を予防

 マクロライド系抗菌薬のアジスロマイシンが、嚢胞性線維症ではない気管支拡張症の患者の増悪頻度を半分以下にすることが、ニュージーランドMiddlemore 病院のConroy Wong氏らが行った無作為化二重盲検試験で明らかになった。論文は、Lancet誌2012年8月18日号に掲載された。

 高解像度CTの登場により、先進国では気管支拡張症と診断される患者が増えている。患者は年に1.5~6.5回の増悪を経験するが、増悪の予防と管理における有用性が示された治療はほとんどなかった。

 アジスロマイシンは抗炎症作用と免疫調節作用を持つことから、著者らは、アジスロマイシンが嚢胞性線維症ではない気管支拡張症患者の増悪の頻度を低下させ、肺機能を改善し、健康関連QOLを向上させると仮定し、これを検証するため無作為化試験EMBRACEを実施した。

 この二重盲検試験は、ニュージーランドの3施設で、08年2月12日から09年10月15日まで行われた。過去1年間に抗菌薬投与が必要な肺増悪を経験しており、高解像度CTにより気管支拡張症と診断されているが、嚢胞性線維症ではない18歳以上の患者141人を登録。1対1の割合で、アジスロマイシン500mgまたは偽薬に無作為に割り付け、週3回(月曜、水曜、金曜)、6カ月投与し、さらに6カ月追跡した。

 主要エンドポイントは、6カ月間の増悪発生率、気管支拡張薬投与前の1秒量(FEV1)の変化、St. Jeorge’s呼吸器質問票(SGRQ)の総スコアの変化の3つに設定。増悪は、「肺症状(喀痰量、膿性痰、呼吸困難)の出現または悪化により抗菌薬投与が必要になった場合」と定義した。ニュージーランドではアジスロマイシンの適応症に気管支拡張症は含まれていないため、増悪時はアジスロマイシン以外の抗菌薬が用いられた。分析はintention-to-treatで行った。

 141人のうち71人(男性が32%、平均年齢は60.9歳)をアジスロマイシンに、70人(29%、59.0歳)を偽薬に割り付けた。全員が割り付けられた薬剤を1回以上使用していた。服薬遵守率は両群ともに非常に高かった。

 服薬中の6カ月間に、アジスロマイシン群の患者は42回、偽薬群の患者は103回の増悪を経験した。この間の患者1人当たりの増悪の発生率は、アジスロマイシン群が0.59、偽薬群が1.57で、率比は0.38(95%信頼区間0.26-0.54、P<0.0001)になった。

 アジスロマイシン群で増悪を経験した患者の数は22人(31%)、偽薬群は46人(66%)で、相対リスクは0.48(0.32-0.71、P<0.0001)だった。

 観察期間の6カ月も含めて、割り付けから12カ月間の増悪回数を調べたところ、アジスロマイシン群は109回、偽薬群は178回で、年間の患者1人当たりの増悪発生率はそれぞれ1.58と2.73だった。率比は0.58(0.46-0.74、P<0.001)。

 気管支拡張薬投与前のFEV1のベースラインからの変化は、アジスロマイシン群はなし(0.00L)、偽薬群は0.04Lの減少で、有意差はなかった(0.04L、-0.03から0.12L、P=0.251)

 SGRQの総スコアの変化にも有意差は見られなかった。アジスロマイシン群の方が改善は大きく、スコアの変化は-5.17ユニット、偽薬群は-1.92ユニットだったが、差は-3.25ユニット(-7.21から0.72、P=0.108)と、有意差は得られなかった。

 アジスロマイシンの増悪予防効果は、性別、年齢、喫煙歴、過去1年間の増悪回数などにかかわらず認められた。

 有害事象のうち、消化管症状(悪心、嘔吐、下痢、上腹部不快感、便秘など)はアジスロマイシン群に有意に多かった(27%と13%、P=0.005)。

 アジスロマイシンは、嚢胞性線維症ではない患者の気管支拡張症の増悪予防に有効であることが示された。効果は、投与終了後も6カ月間持続していた。一方で、肺機能やQOLには有意な影響は見られなかった。

 著者らは、「呼吸器に感染する一般的な病原体のマクロライド耐性獲得に関する報告が増加しており、その理由はマクロライドの使用にあることにも留意し、長期投与は慎重に行う必要がある」と述べている。

 原題は「Azithromycin for prevention of exacerbations in non-cystic fibrosis bronchiectasis (EMBRACE): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial」、概要は、Lancet誌のWebサイトで閲覧できる。
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