ビスホスホネート系製剤の副作用として比較的多く認められる発熱、一過性の骨痛などの感冒様症状は初回点滴投与時に多く出現し2~3日で無治療にて自然緩解します。
低カルシウム血症(テタニー、手指のしびれ)は投与後4~10日目頃に出現することがありますが、カルシウム製剤の併用が推奨されているため治療を要するほどの重篤例は少なくなっています。
重篤な副作用としては腎障害と顎骨壊死(Bisphosphonaterelated osteonecrosis of the jaw:BRONJ)が挙げられますが、腎障害は点滴時間の厳守で発現を抑えることができます。
BRONJの診断基準は、アメリカ口腔・顎顔面外科医学会(American Association of Oral and Maxillofacial Surgenous:AAOMS)で定められており、現在あるいは過去にビスホスホネート系製剤の投与を受けている、顎顔面領域に8週間以上持続する骨の露出・壊死を認める、過去に顎への放射線照射を受けていない、以上3つが挙げられ、さらに下記のステージのように病期分類されます。
BRONJの発生頻度は0.8~12%程度で、1年を超える長期点滴投与者と口腔内疾患を有する症例に多くなっていますが、鑑別を要する疾患として歯槽骨炎、上顎洞炎、歯肉炎、歯周炎、むし歯、根尖病巣、下顎関節疾患などが挙げられています。
治療は遊離した腐骨の除去を行い3カ月以上の休薬が望まれますが、ビスホスホネート系製剤投与継続の有益性とリスクに関する判断は、癌治療医が下すべきであるとされています。
歯科・口腔外科の治療が必要な患者さんは抜歯を先行させた後、治癒を待ってビスホスホネート系製剤を投与したり、投与中は定期的歯科医の診察、口腔内清潔に心がけることが重要です。
顎骨壊死(BRONJ)の病期分類
stage 0
痛みなどの特別な臨床症状がなく、歯周疾患によって説明できない歯の脱落、歯髄壊死によって説明されない口内瘻孔とBONJを暗示しているX線撮影所見を呈する場合
stage 1
骨の露出を認めるが痛み、感染の無い状態
stage 2
化膿、感染と痛みを伴い口腔内漏孔形成
stage 3
口腔外へ漏孔また、歯槽骨の領域を越えて広がっている露出した腐骨、壊死骨、病的骨折、骨溶解が進展し下縁に及ぶか口腔上顎洞瘻を形成している
「乳癌治療」Q&Aより抜粋
東京医科大学病院乳腺科教授
河野範男