Plaque-induced gingival inflammation in the absence of attached gingival in dogs
Wennström J & Lindhe J.J Clin Periodontol.1983;10:266-276
概要
この研究の目的は①付着歯肉の有無や、②異なった歯周支持組織の高さが、歯肉ユニットのプラーク感染に対して及ぼす影響を臨床的・組織学的に評価する事である。
7頭のビーグル犬がこの実験に用いられた。
上下顎の右側がテスト側、左側がコントロール側とされた。
右側では6ヶ月間の実験的歯周組織破壊後に、外科的に歯肉が除去され、4ヶ月間の治癒後に、上下顎のどちらかで付着歯肉の回復のために歯肉移植が行われたが、残りの片顎では、移植は行われなかった。
またコントロール側では、徹底的なプラークコントロールが行われ、上下顎のどちらかで、テスト側での移植時期に合わせて角化付着歯肉が外科的に除去された。
また、残りの片顎では何の処置も行われなかった。
術後4ヶ月間、徹底的なプラークコントロールが全額的に行われた。
この様にして各イヌにおいて異なる「歯-歯肉ユニット」が確率された。すなわち、
(Type1)
十分な付着歯肉幅と正常な高さの歯周支持組織を有する歯肉ユニット。
(Type2)
わずかな付着歯肉幅と正常な高さの歯周支持組織を有する歯肉ユニット。
(Type3)
わずかな付着歯肉幅と減少した歯周支持組織の高さを有する歯肉ユニット。
(Type4)
十分な付着歯肉幅と減少した歯周支持組織の高さを有する歯肉ユニット。
外科処置の4ヵ月後のベースライン検査で、プラークインデックス(PlI)、ジンジバルインデックス(GI)、歯肉滲出液、プロービングポケットデプス(PPD)、プロービングアタッチメントレベル(PAL)、歯肉辺縁の位置、付着歯肉の幅、が評価された。
ベースライン検査後2頭を生検し、残りの5頭は、ベースライン検査後、口腔清掃が中止され、プラークの堆積を許容するような食餌が40日間与えられた。
臨床検査が繰り返し行われ、実験期間の最後に生検が採取された。
組織標本において、組織学的および形態学的分析が行われた。
外科処置の40日後の組織生検における、口腔上皮(OE)、接合上皮(JE)、非炎症性結合組織(NCT)、炎症性結合組織(ICT)の体積比率(%)
Type1 OE(32.8%) JE(7%) NCT(51.8%) ICT(8.6%)
Type2 OE(34.4%) JE(8.4%) NCT(45.2%) ICT(12.0%)
Type3 OE(30.2%) JE(7.8%) NCT(48.2%) ICT(11.4%)
Type4 OE(27.6%) JE(6.8%) NCT(54.2%) ICT(11.4%)
結果
ベースラインにおける付着歯肉幅は、Type1:2.7mm、Type2:0.2mm、Type3:0.1mm、Type4:3.0mmであり、最終検査まで優位な変化は認められなかった。
ベースライン後に口腔清掃を中止したために外科処置の40日後では、PlI=2を示す歯面が70~80%であった。
GIに関しては、Type1に比べて、Type2~4にではGI=2を示す割合が高かった。
PALの変化はどのグループでも認められなかった。
外科的な歯肉の除去後、あるいは軟組織移植後に再生した歯肉は多くの点において、“正常”な歯肉と、組織学的に類似していた。
プラーク堆積の40日後の組織切片からは、異なる「歯-歯肉ユニット」において、結合組織の炎症成分のサイズや根尖側への広がりに関して、いかなる差も認められなかった。
付着の弱い歯槽粘膜に支持された歯肉ユニットは、十分な付着歯肉に支持された歯肉より、炎症に対して感受性が高いという事はないと結論付けられた。
臨床への示唆
感染に対する防御機能は、付着歯肉幅は関係ない事が示された。
上皮は細菌等の外来性刺激から体を守る組織であり、角化層の有無や、部位などによって防御機能が影響を受ける事はないと考えられる。
従って、感染に対しては、プラークコントロールを行う事が非常に重要である。