『A long junctional epithelium - A locus minoris resistentiae in plaque infection?』
Magnusson l et al.J Clin Periodontol.1983;10:333-340
[実験概要]
この実験は長い接合上皮による歯肉ユニットは、通常の長さの接合上皮を伴った歯肉ユニットよりもプラークの感染に対して封鎖効果が低いかどうかを検討するために行われた。
歯頚部にエラスティックリガチャーを挿入する事によって4匹のサルの8本(テスト歯)の歯の周囲で歯周組織の人工的破壊が起こり、楔状欠損が形成された段階で、リガチャーが除去された。
テスト歯の歯周組織に対して歯周外科処置が行われた。
根面の清掃は行われたが、骨の改変は行われなかった。
外科処置後、口腔内全体のプラークコントロール(週2回のラバーカップと研磨剤を用いたクリーニングと0.2%クロルヘキシジンの局所投与)が開始され、4ヶ月間行われた。
実験期間の最後の6ヶ月間は、口腔内清掃が中断されプラークを蓄積させた。
プラーク蓄積の結果としての歯肉炎症を研究するために、各実験動物から4本のテスト歯と3本のコントロール歯が選ばれ、歯肉縁下へのプラーク形成を促進するために、歯肉溝の入り口部分にコットンリガチャーが設置された。
外科処置後の治癒形態は、長い接合上皮を伴う事が知られているので、テスト歯の長い接合上皮と、コントロール歯の通常の接合上皮におけるプラークの感染に対する防御力の差が比較された。
外科処置後10か月で歯周組織ごとの歯の組織切片が作られた。
[結果]
すべてのテスト歯は骨欠損を有しており、骨縁下ポケットが存在していた。
一方コントロール歯では、骨縁下ポケットは認められなかった。
また、コットンリガチャーが設置されたテスト歯とコントロール歯では、0.5~1.2mmの歯肉のリセッションが認められた。
組織学的分析の結果、テスト歯(2.6~3.4mm)は、コントロール歯(1.1~1.9mm)よりも有意に長い接合上皮を有していることが確認された。
プラーク感染の結果としての炎症性細胞の浸潤(ICT)が、通常の接合上皮を有する歯肉ユニットよりも、長い接合上皮を有する歯肉ユニットの方が深く入り込んでいるということはない、という事が明らかになった。
長い接合上皮によるプラーク感染に対するバリア機能は、通常の長さの接合上皮によるバリア機能よりも劣る事はないという事を示唆している。
[臨床への示唆]
長い接合上皮では、プローブを挿入すると深くまで入る事があるかもしれないが、上皮によって防御されているので、炎症の状態に変化はない。
ポケット除去の方がプラークに対して抵抗があるという事について、科学的な根拠はない。