顎関節症は現在、齲蝕(うしょく・虫歯)、歯周病に次ぐ第三の疾患といわれています。
しかし、最近まで顎関節症の診査・診断・治療のいずれもエビデンスに基づいたものが極めて少なく、ほとんど試行錯誤の感覚的な治療が行われて来たのが現実でした。
それは、顎関節内部の描出が困難であったために、顎関節症の診断基準は病態や病因ではなく、顎関節痛、咀嚼筋痛、関節雑音、開口制限、顎運動障害といった臨床症状に基づいていたからです。
顎関節に関する研究はGysiに代表されるように機械的咬合論から、1966年にRamfjord Ashが『Occlusion』に著したように生理学的咬合論が展開され始めました。そして1970年代後半に始まったMRIなどの画像診断技術の進歩により病態の把握が容易になり、顎関節症は症型の分類がされるようになりました。
Griffiths、Bell(1983)らによる症型分類のあと、わが国では日本顎関節学会によって顎関節疾患と顎関節症の分類案が提案され広く用いられております。
現在顎関節症は
①包括的疾患名である。
②精神的要因が強く関与している症例がある。
③咬合を原因として過大評価をすべきではない。
④症状の自然消失が期待できるself-limitimgな疾患であるため、まずは保存療法を優先させる。
などが我々歯科医師の中でも共通認識となって来ています。